2017年7月28日金曜日

決して終わらぬダンスパーティーで、二度と訪れぬ夜明けを待とう

  

.....................

..........タッタッタッタ

幼き女の子が、廊下を駆ける。車のドアを閉める音が聞こえると、彼女は夢中になってやっていたお絵かきもやめて、走り出す。

..........タッタッタッタ..ドッ!!

???「パパおかえりー!」

??「ぐっっ...! ...うん、ただいま」

幼き女の子は、ストレス性胃潰瘍持ちの中年男に、慈悲のないタックルを食らわせた。中年(正確には中年にさしかかっている段階)の男は幼き女の子をうまく払いながら、革靴を脱ぐ。

???「雄太さんおかえりなさい!ちょうどご飯ができたところよ」

家の奥から声が響く。......いい匂いだ。どうやら今日は、ハンバーグのようだ。

今泉「クゥ〜!!(娘)もお腹すいただろう」

今泉娘「うん!(娘)ね、おいしくなあれのまほうをかけたよ!」

  これは、今から15年後、2032年7月28日の、とある家庭を描いた物語。

今泉「今日は、、ハンバーグかな?」

今泉嫁「正解!それとあとうどんよ!よくわかったわね!」

今泉「なんでもわかるよ。神の視点(*1)を持っているからね笑」

今泉娘「カーミ!」

そう言って今泉と今泉娘は、食卓につく

今泉嫁「あーもう(娘)ったら、またお絵描き片付けてない!片付けるまではご飯は食べられません!」

今泉娘「えーーー!ぶぅ!(娘)もおうどんたべるの!」

今泉「ん、ちょっと待って。おうどんにはカラシ(*2)をかけようね」

今泉嫁「ダメよ、片付けが終わるまではお預け!」

今泉「そう言うなって。まだ4歳だぞ?それよりしっかり食べて、ガタイ(*3)良くなってもらわないと」

そう言ってカラシに手をかけた今泉はふと、ほんの一瞬、何かを思い出したかのように、窓に映る虚空を見上げた。

今泉嫁「どうしたの?またキメ顔(*4)の練習?この歳で??」

今泉「クゥ〜!!....ああ、ちょっと学生時代のことを思い出して。」

今泉嫁「サークルのこと?」

今泉「そう、あれから15年経ったんだ。今やビーチラグビーの世界的スーパースターである坂本と堀田が、まだ大学1年だった時の話だ」

そう言うと、今泉は目を閉じた。かつての光景をその瞼に映し出すかのように。

今泉「忘れもしない2017年7月1日、灼熱の日差しが肌を焼く九州大会の日だ。」

今泉娘「おうどんから〜いぃ泣」

今泉嫁「あー、ごめんね(娘)ちゃん、あっちでお口ゆすごっか」

今泉娘「ママもきてぇ泣」

今泉嫁「はいはい」

今泉「1日目はとても良かったと記憶している。当時の先輩方(今は皆社会を裏から操る影の支配者になってしまったので、名前を出すこともできないが)の心強いサポート、当時1年の坂本堀田の予想以上の活躍に支えられ、2戦2勝を果たした。とても良い幕開けだった。あの時は確か堀田が....」

10分ほどかけて、今泉は湧き上がる思い出を順に語った。食卓には今泉の他にもう誰もいない。

今泉「2日目だった。SEINTSさん相手に、こちらは前投げをからめたゲインプレーがほとんどできず、またラインDのブレイクの甘さ、そしてフルバックの立ちまわりの下手さを突かれ、素早いパス回しで翻弄される結果となった。この九州大会で浮き彫りとなったことは、
① 最大のゲイン源であるハリーの意識不足
② ラインDのブレイク、そしてそれを支える素早いブレイクバックの練習不足
③ ざるバック(←相浦のことです。)
④ 声を出すことが途中からできなくなる(ノミネートなど)
⑤ ①〜④を改善するためのスタミナの不足
と言えるだろう」

今泉娘「シャコシャコシャコシャコ......」

今泉嫁「はい、そろそろペッしようか」

今泉娘「シャコシャコ.......ペッ」

今泉嫁「よくできたねー!じゃあ今度こそお絵かきお片づけしよっか。その前にまたお口ゆすがないとね」

今泉娘「ふぁあ〜い、..クチュクチュ.....ペッ」

今泉「あ、あれ?今の僕の話聞いてた?」

今泉が慌てた様子で問いかけると、きょとんとした表情の今泉嫁は、ちょっとだけ意地の悪い笑みを浮かべてこう言った。

今泉嫁「あら、私ったら。ウフフ、ちゃんと聞いてたわよ?それでそれで?明日でその年の関東大会から15年が経つわけだけど、それはどうなったのかしら?」

今泉「そう、その年の関東大会ではね............................」
















    長い夏の夜は過ぎてゆく
    これは、今から15年後、2032年7月28日の、とある家庭を描いた物語。





今日の今泉語録

*1 [神の視点] {Kaminoshitenn}  
 ツイッターでつぶやく人が持つとされている視点。今泉曰く、つぶやきを公開する人は「俺はなんでも知っている」と言っていることに等しいのだ。初出は4/19(水)

*2 [うどんにカラシ] {Udonn-ni-karashi}  
 今泉の偉大なるパパはうどんに必ずカラシを入れるという。もちろん自分自身だけでなく親愛なる息子のうどんにも入れるのだ。初出は不明。

*3 [ガタイ] {Gatai}
 作中では娘に使うのがなんともミスマッチに見えるが、これが正しい使い方。ガタイがいいと男でも女でもボスになれるというのが今泉の主張だ。初出は7/16(日)

*4 [キメ顔] {Kimegao}
 この言葉そのものは木梨さんが使った。今泉は自分のキメ顔を瞬時に作れるぞ。不意に写真を撮られても安心。地味にかっこいいのが心から腹立たしい。初出は7/1(土)

*番外編 [主体性の喪失] {Shutaisei-no-soushitu}
 本編には登場しないが、ここで紹介。現状では避けられない課題に対して、能動的解決を促す姿勢の重要性を主張している。指示待ち人間、群像。初出は7/16(日)

*特別ゲスト枠 [最大の戦犯はレッドブルガール] {saidaino-senpann-ha-redbull-girl}
 九州大会にて
(放送)「ただいま、レッドブルガールがレッドブルを配ってます!早い者勝ちです!」
平井さんと著者は放送を聞き、すぐ20mほどのところでレッドブルを配る女性たちのところへ向かった。
(放送)「ああーっとビーチボーイズが駆ける!」
本部の声援(?)を受け、すぐ駆け付けた2人
レッドブルガール「すみません、配りきってしまったので、20分後にまた来ます。」
................2人は待った。
................練習試合をしながら待った。
................その後彼女たちがビーチに来ることはなかった..........

平井さん「最大の戦犯はレッドブルガール」
初出は7/2(日)



相浦 琢人 著